開発の最前線からお届けするDXの実態

セミナーなどを通し、フロー型の情報発信を行ってきたフェンリル。今年から『ナレッジ』というストック型の情報発信をはじめます。「企業活動やパーパスを“自分たちの言葉”できちんと伝えていきたい」「読んでくださった方々には、フェンリルに何かしらの共感をもってもらいたい」そのような熱い想いで『ナレッジ』をお届けしていきます。
今回は、「フェンリルが取り組むDX」というテーマで、デザインや開発の現場で活躍する、弊社スタッフの対談をお届けします。
国内では生産年齢人口(15〜64歳)が減少傾向(※)にあり、生産性の効率化・最大化を図らなければならないという大きな課題を抱えています。そこで重要になるDXですが、対談から浮かび上がってきたのは、ツールという局所的なITの導入で止まっている現状やDX化を遅らせる阻害要因でした。「それでも私たちは、DXの本質まで掘り下げて取り組む」。そんな共同開発にかけるスタッフの生の声をお伝えします。

フェンリルの「共同開発」に込めた想い

前谷 フェンリルは「共同開発」を掲げて日々お客様に向き合っていますが、共同開発にどのような想いがあるのかを、あらためてみなさんにお聞きしたいのですが。

田代 フェンリルにおける共同開発とは、お客様に伴走し、共にサービスを大きくしていくことを目指すという意図が込められています。一般的には「受託開発」と呼ばれますが、文字通りの「受け身」という姿勢ではなく「お客様と共に」という想いが強いです。

小室 デザイン側としても同じように捉えています。お客様と同じベクトルで見て、一緒に課題を解決しながらプロジェクトを進め、「チームとしてやっていく」ということを大切にしています。

福島 サービスデザインの観点としては、お客様につくりたいものや想いを共有していただいて、それに対して私たちは、デザインと技術を対等に提供して一緒につくりあげていくという捉え方です。

中田 私は入社から1年足らずなのですが、正直に言うと「共同開発」をどう捉えるべきか戸惑っていました。共同開発というと「対等な契約をして一緒に製品をつくって出す」というイメージだったので、これまでSIerとしてやってきた者としては、ピンと来なかったんです。フェンリルで働くなかで、お客様に対して積極的に意見を伝えることであったり、ようやく自分なりの「共同開発」の落とし所が見つかってきたかなという感じです。

前谷 中田さんのおっしゃることもよく分かります。共同開発というと、レベニューシェアやジョイントベンチャー、共同事業というイメージがありますよね。ですので、「共同開発」の表現は避けてほしいとおっしゃるお客様もいます。
単語のニュアンスとして、そのように感じられるのは仕方ないと思うので、お伝えの仕方も含めて、多くのお客様に共感をもっていただけるようにしていきたいですね。

小室 千春(写真左)
フェンリル株式会社 デザインセンター シニアディレクター
ウェブ制作会社やフリーランスのデザイナーを経て、フェンリルに入社。ユーザーとサービス提供者の両者の視点から、ビジネスゴールを見据えて様々なプロジェクトに参画。HCD-Net認定 人間中心設計スペシャリスト。

福島 菜穂(写真右)
フェンリル株式会社 デザインセンター シニアディレクター
自社プロダクトのUIデザイナーを経て、2013年より共同開発事業のUIデザイナー、ディレクターとして活動。HCDプロセスを取り入れたアプリケーション制作を実施。 HCD-Net認定 人間中心設計スペシャリスト。

課題の本質を捉えてお客様を導く存在

前谷 業務についても伺っていきたいのですが、昨今「DX」のワードが飛び交うなかで、お客様からDX推進に関するご要望も多いと思います。みなさんはDXをどのように解釈していますか?

田部 お客様のビジネスやコンテンツの価値、資産価値を高めるという前提で、その手段としてデジタル技術があるという認識です。手段だけが先行しても、DXの本質的な実現には至らないので。

前谷 DXの意義について、経済産業省が定義している内容を一部抜粋しますが、

  ”企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会の
  ニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、
  プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”

  ー経済産業省 デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドラインー
この中で「競争上の優位性を確立するうえでの企業文化・風土の変革」という部分は、現場の肌感としてどう捉えられていますか?

福島 業務ツールの改善とか既存システムの置き換えではなくて、「全く新しい働き方」について、お客様自身が変化/変革を起こす必要があると思っています。
担当者様は今までのものを捨てて、組織の考え方をシフトすることに労力を使われている。それに対して、私たちが一緒になって考えを巡らせ、提案していくという構図です。
「作ったから使え」ということでは浸透せず、「どれだけ自分たちに寄り添っているか」を感じてもらうことの方が、重要だと感じるようになりました。
DXの手段として、ただツールを導入するのではなく、「働いている方の意識やニーズに合致していくものづくり」と「組織づくり」の、両面が必要だと思いますね。

田部 祐樹(写真左)
フェンリル株式会社 開発センター プロジェクトマネージャー
ウェブからアプリまで数多くのプロジェクトを担当するプロジェクトマネージャー。
昨年から、共同開発案件と並行して自社プロダクトの開発にも参画。

中田 祐樹(写真右)
フェンリル株式会社 開発センター クラウド事業推進部 マネージャー
新事業や新技術サービスと実行組織を回す人。バイク乗りだが、最近始めた実弾射撃の趣味でワクワク続き。

前谷 DXに限らずですが、お客様はプロジェクトを通してフェンリルにどんなことを求めていると感じますか?求められていることに対して、みなさんがどのように向き合っているのかも含めてお聞きしたいです。

田部 お客様のリテラシーは幅広いですし、期待値もそれぞれ違います。フェンリルの共同開発のマインドを尊重してくださるお客様もいますし、手段を提供するというところに価値を見出すお客様もいらっしゃいます。
開発のご要望をいただいたプロジェクトを「どのように実現していくか?」を常々考えています。その中で気づいたことは、目的に合わせた手段の実現より「事業の成功を担保してほしい」というニュアンスを感じる場面もあります。その場合はどこかで線を引かなくてはいけないと思っています。
共同開発という目線、マインドを前提に話をすることを心がけながら、お客様が求める実現性のことも含めて、両面で話をしていくプロジェクト運営が大切になります。

中田 DXの成功というのは、製品を届けて終わりではなく、お客様が変わらなければ意味がないと思っています。「お客様自身が」という主語が強くなるのがDXです。
お客様が望まれたものをつくってお渡ししたはずなのに、それを扱いきれなくて困惑されてしまうことがあるんです。製品を手にした「その先」が大切なのですが、活用しきれずに前進できないという現実。そこを耐えて前に進めば、思い描いていた結果に近づけると思うので、「お客様自身が主役」となり、変えていってほしいと思います。

中田 そういうやりとりをしているなかで、お客様が本質に気がついた瞬間とか、ひらめいた瞬間って分かりますよね!お客様のそういう表情を拝見できたときはホッとします。

小室 ひらめきの前に、お客様の悩みに共感できた時も「言葉が通じあった!」という感覚があり、本当に嬉しいですね。
実際にアプリを使う方のリサーチを通じて感じたことですが、ユーザーの動きや課題をインプットし、それを言語化して話を進めていくと、フェンリルがお客様と同じ目線になれる瞬間があります。そこから一気にプロジェクトが前進し、信頼を得ることができたと思います。案件によっては、途中で本質から逸れてしまうことも多々あります。お客様に言われたままを受け入れて進めるというよりも、フェンリルから建設的な提案を行い、本質まで軌道修正していける関係になることが、私たちの理想とする共同開発の姿だと思います。

中田 受託と呼ばれる案件だと、製品を納品した時が最もハッピーな瞬間なのですが、共同開発の場合は、製品・サービスを通してどんどんハッピーになっていくという感じがしますね。一緒に仕事をさせていただいている間は、ハピネスを届けつづけられるという感覚。受託開発よりも、圧倒的に多いハピネスをお届けできると思います。

前谷 達也(写真左)
フェンリル株式会社 マーケティングセンター マネージャー
メインフレームや基幹系サーバーのITインフラ性能管理の提案営業を経てフェンリルに入社。西日本の営業部隊の立ち上げを経て、より広くマーケットへのフェンリルの価値伝播と営業組織力向上を目指して営業企画業務へ従事。

田代 収(写真右)
フェンリル株式会社 開発センター 兼 事業開発センター中国事業部 プロジェクトマネージャー
アプリ開発のプロジェクトマネージャーとして、お客様のアプリをエンハンスしながら、中国事業の拡大や新規事業の開発にも従事。

DX化の阻害要因となるもの

前谷 日本だとDXという言葉が飛び交っていますが、たとえば中国ではどうなんでしょうか?

田代 一般的には、中国の方がデジタル文化が進んでいると認識されていますが、DX以前にコミュニケーション面の課題で躓かれている企業が多い印象です。突出して進んでいる企業とそうでない企業とで、かなり極端に分かれているように感じます。

田部 中国の先進企業の場合、一歩ずつではなく一足飛びに新しいことを行うという特徴があり、目的が先行している印象です。一方で、日本の場合は手段が先行し、本当の目的に近づけない消極的なDXになっている気がします。
「デジタイゼーションはやるけど、それ以上はやりたくない」という本音を感じることもあります。「変えたいけど、変えたくない」という矛盾を合わせ持っていると感じます。

中田 「あの人の仕事をなくしたくない、ポストを残してあげたい」みたいな想いも見え隠れしますよね。そういう優しさというか、現状をおもんばかる文化も、日本でDXが進まない要因のひとつだと思います。

田部 それは本当にそうですね。たとえば、伝票処理の仕事をデジタル化するにあたって、効率を重視するのではなく、伝票のデータをそのまま画面に映し、「今と同じことができれば良い」みたいな、消極的なアプローチで止まっているケースもあります。

小室 会社がDXをうたっていても、縦割りになっている社内では浸透しないケースもあります。デジタイゼーションは部署内で完結できるけど、DXは部署をまたぐ必要があり、その壁を越えることはとても難しい。根本的な解決に至っていないことをお伝えしても「この壁は超えられないので…」という消極的な姿勢で、最終的に提案がコンパクトにまとまってしまうことも多く、個人的にもどかしさを感じる場面もあります。

田代 担当者によっては、「問題や課題を会社に伝えて気づかせてほしい」という方もいらっしゃいます。改革や効率化に対して、積極的に行動していただける担当者の方がいる場合、共同開発というフェンリルの姿勢を十分に発揮できると思います。

プロフェッショナルとして達成していくミッション

前谷 では最後に、フェンリルが共同開発を通して目指すことや、個人としての目標、あるべき姿について、思うことをお聞かせください。

小室 そもそも私たちはデジタルを中心とした開発をしているので、言ってしまえば全てはDXに繋がっていると思います。どんな案件でも、お客様の本質をどう捉えるかということで、やることは変わらないです。お客様と一緒のゴールを見ながら取り組んでいくという姿勢ですね。

中田 私のミッションとしては、デジタル戦略のプロとしてお客様と接する以上、自分たちのDXが完了している状態であることが重要だと思っています。クラウドのサービスなり何なりを使いこなして、しっかりビジネスをつくっていることを見せられないと、信憑性がないですから。
好き嫌いせずに新しい技術も取り入れて、先に失敗する経験も大事です。そうした経験を積み重ねながら、お客様が求めるものに合わせて最適な手段を選んでいくというのが、私の職能かなと思っています。

田部 自分たちができることの効果、事業的な目線での効果を自分たちで言語化する必要がありますよね。具体的に言うと「このサービスはこれまで障害なく無停止で動いている」「サーバーのレスポンスタイムが1秒以上超えたことがない」など。フェンリルのスペックを言語化・数値化することで、信頼感や納得感を与えていきたいです。
お客様が心理的な安全を感じ、「よし、やってみよう!」と思っていただけるロジックをつくったり、「私たちに任せてください!」と言い切れるようにしていきたいですね。

福島 私のポジションにおけるミッションは、「本当に利用されるのか」「本当に価値があるのか」という部分の調査を進め、企画やコンテンツ、UIなど、お客様の目的に沿った内容を具体的かつ効果的に紐付けること。そして、サービス導入の費用対効果をお見せすることです。これからも滑走のタイミングから寄り添い、一緒に着地を目指していきます。

田代 「DXとは何か?」についても改めて考えてみましたが、提唱される前から、フェンリルが取り組んできていることに気づきました。DXは重要な考え方ではありますが、フェンリルとしては、「DXの次に何が求められるのか?」についても、考えを巡らせる必要があります。
たとえば、コロナ禍で急速に進んだリモート環境下で、VX(ヴァーチャルトランスフォーメーション)と呼ばれる「現実世界と仮想世界を融合する変革」を指す概念も注目されています。すでにフェンリルとしてVXの取り組みは進んでいて、伊藤忠インタラクティブ様と共に、VR VENUEというサービスをリリースしています。
常に先を見据えながら、「どういう価値があるのか?」を具体的にお届けしていくことは、個人としても会社としても目指していきたいところですね。

参考文献・引用元
※経済産業省|2018.「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/001_04_00.pdf

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