ビジネスをドライブさせる営業支援システム

セミナーなどを通し、フロー型の情報発信を行ってきたフェンリル。今年から『ナレッジ』というストック型の情報発信をはじめます。「企業活動やパーパスを“自分たちの言葉”できちんと伝えていきたい」「読んでくださった方々には、フェンリルに何かしらの共感をもってもらいたい」そのような熱い想いで『ナレッジ』をお届けしていきます。
また、「フェンリルがサポートできること」を分かりやすくお伝えするために、架空のクライアントの課題解決を描いた「DX ケーススタディ」をお届けします。今回は、加工食品の製造・販売を行う企業の「営業システムの変革」について、具体的なアプローチをご紹介します。

クライアントが抱える課題

営業支援システムを刷新するまでの経緯

クライアントは加工食品の製造・販売を手がける A 社です。トップシェアの商品群も抱え、年間売上高は500億円を超えています。ニーズに先んじた商品開発力と、TVCMによる積極的な広告展開により、ブランドは一般消費者にも広く認知されています。近年、業績は順調な成長を続けていますが、新型コロナウイルスの影響もあり業務用の分野で計画を大きく下回る結果となりました。そこで同社は、外部環境の変化への対応として、新たなライフスタイル下での市場創出と、懸案であった昔ながらの営業スタイルの変革、営業支援システムの刷新に取り組むことを決めました。いわゆる「DX化」です。

無計画な商談が多発

これまでの営業戦略は、商談数を増やすことで成約を増やすという単純なものでした。新規顧客獲得のために、闇雲に訪問件数を増やしたことで、無計画な商談が多発。短期的に売りやすい安易な商品を選定した結果、解約率の高さが課題として浮き彫りとなっていました。

外回り中に入出力するには、PC だと効率が悪い

既存の営業支援システム(以下、SFAと記載) は Windows ベースであり、利用するには PC を起動する必要があります。また、「外回りの移動中に予定を確認したい」など、営業担当から改善要望も上がっていました。日報や商談結果は帰社後の入力となることが常態化し、内容に抜け漏れが目立っている状態でした。

ベンダー主導によるスピード感の乏しいシステム改善

既存 SFA は数年前にシステムベンダーに委託して構築。保守・運用も委託して改善を進めてきましたが、システムの肥大化と複雑化による改修のリードタイムの長期化によって、コストの高騰が目立つようになってきました。 また、始業時のアクセス集中によるパフォーマンス低下も課題でした。サーバーはオンプレミス(自社で保有する環境)で稼働しているため、サーバーの処理能力を高める対策が非常に困難な状況となっていました。

フェンリルがサポートしたこと

フェンリルが選ばれた理由

同社は新たな SFA 調達に向け、SaaS(※1)、パッケージ、オープンソース等を検討しました。 業務要求へのマッチ度合い、トータルコストから既存システム同様にスクラッチ開発を決め、複数の企業に提案を依頼。その結果、利用者である営業担当の従業員体験を重視した UI 案と、デザインから開発、運用補助まで一貫したサポートから、フェンリルをお選びいただきました。

利用状況を調査・分析し、「あるべき業務」を策定

まずは営業の業務と課題を理解するために、複数人の営業にインタビューを実施しました。得られた情報を元に理想の業務フローを作成し、課題とニーズを整理した結果、現行のシステムは利用シーンにそぐわない画面遷移といった、UI の改善点だけではなく、マネージャーが把握、管理したい情報の欠如など、業務改革に直結する問題が明らかとなりました。

A 社の運用担当者と営業メンバー、フェンリルの開発チームが一丸となり、ワークショップとディスカッションを通して解決アイディアを出し合って、リニューアル後に目指す従業員体験とコンセプトを作成しました。

また、リリース後の継続的改善にあたり、課題や要望の管理、対応優先順位決定フローを策定し、ROI(投資利益率)を最大化する仕組みを取り入れました。

ワークショップで策定した、対応優先順位決定フロー

すべてのフローを営業戦略に合わせて刷新

従来の SFA には存在しなかった商談ごとの提案商品指定、商品ごとの顧客反応の入力を必須とし、 商談の準備と結果の報告をルーティン業務としました。作成した商談予定には、先輩営業担当が「いいねボタン」や「コメント」で フィードバックできるようにし、商談のクオリティを向上させる仕組みへと変えていきました。

初期リリース後は内製化にシフト

開発からリリース初期までは、フェンリルが請け負って主導する形で進めていきました。 しかし、コストを抑えてスピーディーな改善を実現するため、機能追加や改善については、 クライアント側で開発する内製化へと踏み切りました。フェンリルは CI/CD 環境の整備や設計レビュー、 コードレビューなどで支援を継続しました。

サービスの用途に合わせたデザインを適用

UI は利用シーンに合わせ、スマートフォンによる利用をメインとしつつも、帰社後の PC での利用効率も考慮し、 レスポンシブデザインとしました。商談報告など、今までフリーテキストで入力していた項目も、 極力ボタンタップのみで入力が行えるように改善。管理する情報が増加しても、営業担当の業務負荷を減らすことに成功しました。

食品から連想した赤と黄色をメインとアクセントカラーに使用。
毎日使う人の「利便性」と「体験」を考慮し、コントラストを強くした「見やすいデザイン」に仕上げています。

運用負荷を軽減しつつ、処理要求を分散

サーバーインフラは AWS(※2) を採用しました。サーバアプリケーションはコンテナイメージとし、 AWS ECS/Fargate(※3) 上に配置しました。DB は Amazon Aurora(※4) としました。 始業時のアクセス集中に合わせて ECS タスク数を制御し、Amazon Aurora のリードレプリカ(※5)を利用することで負荷を分散し、 処理要求に対応しました。

AWS 構成イメージ

通信環境が悪い状況でも高速に動作

PWA(※6)要素である Service Worker(※7) にて、コンテンツを端末ローカルにキャッシュしました。 通信環境が悪い状況でもアプリケーションの基盤はローカルのデータを参照することで、高速に動作させることができ、ユーザーのストレスを軽減しました。

開発後に起きた変革とは?

利便性だけではない「価値」を創出

モバイル化され、既存 SFA とは利用シーンや入力内容も大きく変わりましたが、 出先での利用性の向上のインパクトが大きく、営業担当からの評価は概ね好評でした。 若手の営業担当にとっては商談シナリオを検討する習慣が身に付き、 営業マネージャーにとってはフィードバック時の指導にも繋がり、顧客との長期的な関係性を作る商談の基盤となりました。

内製化にあたってはエンジニアの採用、育成など課題が多く残っています。 しかし、クラウドを軸に技術的な知見が社内に蓄積されはじめ、 技術面では完全にベンダーに依存していた状況に変化が生まれました。

営業支援システムの開発といっても、単に使い勝手が良くなって便利に変わるだけで終わりません。
DX の本質的な話にもつながりますが、「緻密な設計」と「考え抜かれたデザイン」を施したシステムは、 ビジネスチャンスの増幅装置となり、ドライブさせる力を持つようになります。

執筆者からのメッセージ

上記のような DX ケーススタディを通じて、「フェンリルが支援できること」を知ってもらえたら幸甚です。 目まぐるしく変化する外部環境への対応だけでなく、従業員体験の向上や将来的に内製化を視野に入れた IT 導入についても、 お気軽にご相談ください。

本記事の執筆者|河岸 誠二
フェンリル株式会社 開発センター プロジェクトマネージャー
2013 年にフェンリル株式会社に入社。ウェブアプリケーション開発のエンジニアやプロジェクトマネージャーとして、 ウェブ開発共同部の礎を築く。マネージャーを経験後、ウェブの枠を超えて新規サービスの立ち上げやセールスエンジニアとして活躍。 現在は ND 部にて、特定クライアントとの共同開発に注力している。




※1. SaaS:利用者側で必要な機能や分量のみを選択して利用できる、ソフトウェアや提供形態。
※2. AWS:アマゾン ウェブ サービスの略。世界で最も広く採用されているクラウドプラットフォーム。
※3. Amazon ECS:Amazon Elastic Container Serviceの略。コンテナ化されたアプリケーションを簡単にデプロイ、管理、スケーリングするのに役立つサービス。 AWS Fargate:サーバーを管理することなくアプリケーションの構築に集中することができる従量制料金のコンピューティングエンジン。
※4. Amazon Aurora:クラウド向けに構築された、MySQL および PostgreSQL と互換性のあるリレーショナルデータベース。
※5. リードレプリカ:更新用データベースからレプリケーションされた参照専用のデータベース。
※6. PWA:Progressive Web Apps の略。ウェブサイトやウェブアプリをネイティブアプリのようにアプリとしてインストールを可能にする技術。
※7. Service Worker:ウェブページとは別にバックグラウンドで動作する Javascript 環境のこと。

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