実績:AI Support | フェンリル

高度な専門知識を素早く取得できる、生成AIを活用したQ&Aシステム

船舶用電子機器の製造販売をはじめ、ヘルスケアや情報通信分野など、幅広い事業を展開する古野電気株式会社。世界の各拠点で活躍する古野電気のエンジニアは、お客さまや社会に貢献するための事業活動を推進しています。しかし、ベテランエンジニアから若手エンジニアへの高度な専門技術の伝承に課題を抱えていました。

そこで、現場対応するエンジニアの技術をその場でサポートする、専門性の高いQ&Aシステム「AI Support」を開発しました。

今回、このシステムをさらに活用してもらうため、拡張性と回答精度の向上を目指したリニューアルプロジェクトが始動。このプロジェクトで、フェンリルは開発を担当しました。
「全拠点のエンジニアがAI Supportを利用し、全世界のエンジニアのナレッジを共有できる文化を作り上げること」を目標に、古野電気の社員が必要な情報を素早く取得できる環境を構築しました。

AI Supportは、一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアム（JDMC）が、データマネジメントにおいて他の模範となる活動を実践している企業・機関を表彰するデータマネジメント賞2025を受賞。多くの企業が抱える中間層の人材不足という課題に対して、解決策を提供している点が評価されました。世代間の技術継承問題を解消するAI技術として、業界で注目を集めています。

カスタマイズ性と運用のしやすさを両立

AI Supportシステムのカスタマイズ性を求めていた古野電気。
カスタマイズをしやすい仕様にすることはもちろん、その後の管理と運用がしやすいインフラ設計を実施しました。構成にはスケーラビリティと柔軟性を持たせ、将来のデータ増加にも対応できる仕様にしています。

AI SupportはAWSを基盤としたクラウド環境で運用されています。AWSのマルチAZ構成による可用性が向上する設計を取り入れ、障害発生時でも現場利用への影響を最小にし、安定した運用を実現しました。また、App RunnerやDynamoDB などのフルマネージドサービスを活用し、システム管理と運用保守の負担を極力抑える設計を採用しました。

さらに、CI/CDを構築することで開発工程で発生するアプリケーションのデプロイ等の手作業箇所を自動化しました。今後開発者が追加開発する際の作業を効率化できます。

システム最適化のため、OpenSSAを活用

古野電気のエンジニアの質問に対して、専門的な技術情報をアウトプットするために、フェンリルが選んだのはOpenSSAです。

OpenSSAは、AITOMATIC社が開発した特定業界向けの小規模専門AIエージェント（SSA）を開発するオープンソースフレームワークです。
フェンリルはAITOMATIC社と協業し、OpenSSAを活用した企業向けAIソリューションを開発・提供しています。
体系的なHTP計画により、複雑なタスクを扱いやすい規模に分解し、迅速な意思決定のための枠組みOODAループに乗せることで解決策を導きます。

OpenSSAの導入にあたっては、効果的な機能活用を目標に、実際に使用する古野電気のエンジニアの業務理解を推進しました。その上で、OpenSSAの活用方法について議論を繰り返し、OpenSSAのデフォルト機能をそのまま利用せず、回答時間を短縮するために推論回数を最小限にするなど、現場での利用を想定して調整しました。

また、複数のエージェントを利用するマルチエージェントアーキテクチャをOpenSSAで導入。業務や特定の分野に特化したエージェントを選択することで、その分野に適した回答が可能な仕組みを構築しました。

一方で、OpenSSAをAzure OpenAIで利用することを想定した際の課題も浮上しました。OpenSSAはデフォルトでAzure OpenAIに対応しておらず、精度は高いが回答速度が遅いといった点です。そのため、OpenSSAをAzure OpenAIでも利用できるように、OpenSSAのソースコードを解析し、対応するコードを実装することでAI Supportに適した状態になりました。

社内文書を活用した、社内向けQ&Aシステム

AI SupportではRAG＊技術を活用しました。
あらかじめ指定した社内文書を検索してAIが回答するため、正確かつ一貫性のある情報提供が可能になりました。さらに、回答時に参照した資料、ページ、URLを表示することで回答の信頼性を確保しています。

また、質問の内容によってAzure OpenAI、AWS Bedrock、OpenSSA からAIモデルを選択できる仕様にすることで、どこまでAIに自由に発想させるかを調整できます。
加えて、UIの多言語化を実施。問い合わせの際に英語・日本語・中国語の言語を判定し、問い合わせと同じ言語で回答される設計にしました。

TeamsへはAI Support をチャットボットとして追加。
まるで隣に技術に詳しい社員がついてくれているような感覚で日々の業務に取り組める環境を提供しました。

＊RAG…Retrieval-Augmented Generation
大規模言語モデル（LLM）の出力を最適化するプロセスです。LLMが持つ強力な機能に、特定の分野や組織の内部知識ベースを組み合わせることで、より関連性が高く、正確で有用な出力を可能にします。LLMを再トレーニングする必要がないため、費用対効果の高いアプローチであり、さまざまな状況に対応できます。

制作スタッフ

プロダクト

プロジェクトマネジメント

木村裕亮

プロジェクトリーダー / クラウドエンジニア

野中佑真

クラウドコンサルタント

髙芝葵

アプリエンジニア

ネイトウアウン、白川浩史

営業

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