アプリグロースの起点を生むASO対策

アプリは作って終わりではなく、むしろリリースしてからが本番。ビジネス上、いかに多くのユーザーに愛されるアプリにするかが重要になってきます。より良い体験を生み出し、継続的にユーザーに利用してもらえるサイクルを構築するためにも、まずはユーザーをアプリに呼び込むことが必要です。
アプリをダウンロードする際にまずユーザーが訪れるのはアプリストア。そこで今回は自社アプリの露出を最適化させるASO(App Store Optimization、アプリストア最適化)対策についてご紹介します。

サービスのグロースに欠かせないUXの考え方

モノを作れば必ず売れる時代は終わりました。モノが溢れ、技術が進歩した現代の日本では、競合の商品やサービスとの差別化が難しくなっています。また、インターネットやSNSの普及によりさまざまな情報が容易に手に入るようになり、人々の評価基準はますます多様化しています。
このような現代社会において、人々は商品やサービスを通して得られる「体験」を重視します。企業はただ利益を追求するだけではなく、マーケティング戦略を組み立てる上でユーザーの関心や感情に配慮する必要があります。

その上で重要な考え方がユーザーエクスペリエンス(以下、UXと記載)です。UXとは、「商品やサービスとのあらゆる関わりによって発生するすべての感情」を表す言葉です。「あらゆる関わり」は幅広く、使用感や使い勝手など、サービスを利用している最中の感情だけではなく、利用の前後に生じる感情も含まれます。例えば「広告を見て良さそうだと感じた」や「ECサイトで注文したけど、思ったものと違う商品が届いてがっかりした」などが当てはまります。UXについて、詳しく知りたい方はバックナンバーの「UXを改善するとはどういうことか」 をご覧ください。

アプリの場合だと、ダウンロードする直前のタッチポイントはアプリストアです。もちろんそこでの体験も考慮する必要があります。これがASO対策です。

ASO対策とは

ASO対策は「アプリの認知度を向上させ、ダウンロード数を増やすための施策」です。SEOのように「アプリストアの検索順位を上げて、流入を増やすための施策」と認識されることがありますが、それだけではなくダウンロードされる確率を高めるため、ストア詳細ページの見せ方を工夫する施策も含まれています。


ASO対策の範囲

具体的なアプローチ

次にASO対策の具体的な内容について説明します。

01. インプレッションの最大化

インプレッションとは、広告やSNSの発信が表示された回数のことです。インプレッションの最大化には、大きく分けて「キーワードを認識させる」と「検索順位を上昇させる」という2つのステップがあります。

1点目の「キーワードを認識させる」というステップで重要なのは、タイトル、サブタイトル、App Store Connectに設定するキーワード(iOSのみ)の選定です。検索ボリュームの多いキーワードや、アプリの特徴をうまく表現するキーワードを選び、文字数上限の100文字(コンマ区切りを含む)に収まるようにします。
2点目の「検索順位を上昇させる」というステップでは、テキスト対策(選定したキーワードをアプリの説明文にどう入れ込んでいくか)を中心に進めます。やみくもにキーワードを説明文に入れ込むのではなく、「キーワードを認識させる」のステップで選定したキーワードをアプリの内容に沿う形で入れ込み、品質スコアが高い文章にするのがポイントです。

02. コンバージョンレートの最大化

コンバージョンとは、ストアを訪れたユーザーが訴求を受けて何かしらのアクションを起こすこと、つまりアプリをダウンロードすることです。そのためにはストア詳細ページの見せ方を工夫し、アイコンとスクリーンショット、レビューを最適化してダウンロードの確率を高める必要があります。

・アイコン

アプリアイコンはストアの検索結果に表示されます。
アプリの第一印象を左右するものであり、コンバージョンにも大きく影響します。ポイントは、アプリの特徴を分かりやすく表現したデザインにすることです。特に認知度の低いアプリの場合は、アイコンでそのアプリをイメージしてもらえるようにする工夫が必要です。

・スクリーンショット

スクリーンショットもアプリの印象を左右する重要な要素です。
何のアプリかを示すと同時に、アプリの使用感や機能のアピールポイントを上手く表現することが必要です。

デザインのポイントは以下の通りです。
・競合と比べて、目立つ・目を引くものになっているか
・背景・文字・イラスト・モックは視認性が高いか
・スマホ画面に表示されることを考慮したテキストサイズになっているか
・動画を挿入した場合、ポスターフレーム(サムネイル)を適切に設定できているか
・信頼感・安心感を与える、客観的根拠に基づいた評価が表示しているか
例:「利用率No.1」「店舗掲載数No.1」「〇〇監修」
・訴求の仕方がユーザーのペルソナに合っているか
など

・レビュー

アプリのレビューはユーザーがダウンロードする動機にも大きな影響を与えるため、その対策はASO対策の中でも特に重要です。レストランの予約をする際、評価や口コミを確認するのと似ていますね。


レビューが与える影響
トータルレビューが★4未満だと、半分以上のユーザーがダウンロードをためらう傾向にあります。

レビュー対策として有効なのはレビューを依頼するポップアップの実装です。特にユーザーがポジティブな体験をした際にポップアップを表示させると高い評価が得られやすくなります。

実際にフェンリルが携わった事例を紹介します。
とあるアプリで自動ログイン機能を追加実装した際に、「バージョンアップ30日後からカウントして、ログイン成功回数が3回に達した場合にレビュー依頼のポップを表示する」という仕様で実装しました。
ポップアップが出るようになったタイミングから一気に高評価が増加。☆1.75だった評価がたった1ヵ月で4.01に改善され、ダウンロード数も大幅に増加する結果となりました。


各トータルレビューにおけるダウンロードへの意欲の高さの割合
レビュー依頼のポップアップを表示してから評価するユーザーが急激に増加したことが分かります。

ポイントは、①ポップアップ実装と同時に低評価の原因を解消したこと、②レビュー依頼のポップアップを表示するのを少し遅らせたことです。
自動ログインを実装し、ユーザーにその成功体験と問題箇所の改善を実感してもらうには少し時間がかかります。その前にレビュー依頼をしても、低評価が増えるという事態を引き起こしかねません。

このように、低評価につながる問題箇所の改善と高評価獲得に向けた施策を同時に実施すると効果的です。アプリの低評価でお悩みの方はぜひ一度検討してみてください。

重要なのはわかるが進まないASO対策

ASO対策はアプリダウンロードの体験価値を高める施策として重要と認識していながら、取り組みが進んでいないアプリも多いのではないでしょうか。その原因の一つに、ASO対策をする部門を定めづらいことが挙げられます。アプリユーザーを増やす施策はマーケティング部門の業務ですが、多くの企業でアプリストアの管理はプロダクトの開発部門が担っています。マーケティング部門としてASO対策が大事なのは分かっていても、ミッションではないので積極的には関わらないことが多いです。

一方、プロダクトの開発部門は、アプリストアはアプリをリリースするために必要なプラットフォームとしか捉えていないことが多く、登録が解除されないようにするのが最優先目標となり、ユーザーから魅力的に見える工夫まで手が回らないとの問い合わせが多く寄せられます。
このようにASO対策が宙に浮いた状態になっているケースが多くなっています。

外部に依頼することも選択肢の一つに

ASO対策は自社で費用を掛けずに行うことができます。ただ、ASOで成果を上げるためには、ASO対策のノウハウのほか有料の専用のツールが必要となってきます。自社での対策が難しい場合には外部に依頼することも可能です。
フェンリルではアプリの開発やデザインだけではなく、アプリグロースの戦略と施策も提案しています。気軽にお問い合わせ ください。

本記事の執筆者|山田 直輝
フェンリル株式会社 マーケティングセンター 営業企画部 課長
ITベンダーに入社し、大手企業を対象とした基幹システム向けソフトウェアの営業/コンサルティングに従事。 その後、デザイナーに転身しグラフィックデザインやウェブ広告を手掛ける。2018年よりフェンリルの西日本エリア営業を担当。
現在は営業企画部門の立ち上げに携わり、営業施策の企画や運用に従事している。

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