2016.6.10

デザイナーがもっとデザインと向き合うために必要なこと

デザイナーの長谷川です。主にクライアント向けのデザインや企画提案などを担当させていただいております。クライアントからオファーを受ける案件については、自社プロダクトの開発と異なり、期間や予算など様々な要件に応えて結果を出していく必要があります。

与えられた条件の中で「より良いデザイン」を提供していくためには、様々な技術や手法、考え方があります。その中で少し地味ではありますが、時間についての考え方をお伝えしたいと思います。

コラム 良いデザインのための時間の作り方 イメージ

デザインと向き合うために必要なこと

学生の頃に美術やデザインの授業をサボっていて、先生に注意される事が何度かありました。その言い訳に「先生、今アイディアを考えているので、サボってるわけではありません」と言うと、決まって言われていたのが【下手の考え休むに似たり】です。

「下手の考え休むに似たり」と言うことわざは、よい考えが浮かばないのに長く考え込むことは何の役にも立たず、時間の無駄だという事です。

「お前たちが考えて(考えてるふりをして)も時間の無駄なので、さっさと筆を動かしなさい」と、当時はその言葉通りに受け取っていてそれについて特に深く考えたことはありませんでした。しかし思い通りに仕事が進まなかったり、長く考えているにもかかわらず良いデザインが浮かばなかったりすると決まってこの言葉が頭をよぎりました。サボっているわけではなくむしろ逆に頑張っているのに、なぜ時間が足りなくなり良い案も出てこないのだろう?と思うことがありました。

デザインの仕事と一口に言っても、単純に絵を描くだけではありません。最近では UI デザインや UX コンサル、企画や提案などといったクライアントとのコミュニケーションなども含めてカバーする範囲が広くなり、昔と比べて要求が格段に上がってきています。

そのような状況の中でクライアントの期待に応えるため、より良いデザイン提案がしたいと考えれば考えるほどハードルが高くなり、単純な事務作業も手につかない場合もあります。そうなるとデザインの開始が遅れたり、少し時間を置けばいいアイディアが浮かぶかと思っている間に納期が迫っていたりと、最終的に自分が納得する仕事ができたかどうか、よく分からないという様な状態に陥りがちです。

「下手の考え休むに似たり」の「下手の考え」は良いアイディアが浮かばず長く考えこむ事が無駄というのではなく、雑務や様々な感情のせいで、デザインと向き合うことに対して腰が重くなってしまっている勿体無い状態だということです。

そのような状態から脱却し、純粋にデザインと向き合うためには、それ以外の要素を排除する必要があります。

以下は私がデザインワークに必要な時間を多くとるために、日々心がけていることです。

効率的に雑務を片付ける

一言で言うと GTD です。日報・会議・作業進捗の報告など、日々必ずしなければ作業は、効率良くできるようにすることです。最適なツールや手法を使い、時間を決めて抜けなく早急に終わらせてしまいましょう。タスクごとにタイムリミットを設定して最短記録にチャレンジしたりすると、単純な作業も楽しんでこなせたりします。

要件の整理を最速で

デザインワークとは殆どが要件や条件の整理と言っても良いくらいです。整理が終わると、そこからが純粋にデザインと向き合う時間になります。案件の要求や要望など様々な要素を事務的に素早く整理しましょう。

具体的には議事録の内容をデザイン時に見やすいようにまとめたり、資料を確認しやすく整理したりするだけです。

これだけでも、あの時クライアントがどう言ってたっけ?あの条件ってどの資料の何ページだっけ?が無くなるので、デザインに集中できます。

素早い判断と直感を信じてすぐに行動する

A 案で行こうかな? B 案にしようかな?トレンドを追いかけるとクライアントの要望と矛盾しているし…などデザインには考えることが多く、思考や手が止まってしまい勝ちですが、自分の経験や感覚を信じましょう。その経験や感覚から出たアイディアは素晴らしいもののはずです。それがベストなものではなくてもすぐに形にすることで、方向性の確認や試行錯誤、別の案を作成する時間や余裕が生まれます。例えば UI 設計の際に画面遷移で実際の動きを見てみないとイメージがつかめないので、作業が進まない時などは Prott などのビジュアルベースのプロトタイピングツールを使って確かめると短時間で解決できるはずです。

手法やパフォーマンスの改善については、個人差や個人にあった方法があると思いますので、紹介した事例はあくまで私個人の感覚になりますが、事務系の雑務などは思考を使わずに事務的に短時間で済ませる。経験や実測に基づいて出たアイディアには自信を持ち、短時間で形にし、ブラッシュアップするための時間を作る。これだけでデザインと向きあう時間が多く取れて、パフォーマンスが発揮できるでしょう。

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