2016.6.8

アプリ開発プロジェクトを成功に導く「リスク管理」の心得とは

インターネット上で提供されるサービスの主軸が PC からスマートフォンに移行している流れのなか、スマートフォンアプリに求められる役割はますます大きくなっています。また、スマートフォンは進化のスピードが非常に速く、新たな機能や UI、サイズバリエーションが続々と登場しており、アプリの持つ可能性は広がり続けています。

このような背景のもと、アプリ開発は複雑で大規模なものになってきています。決まった予算やスケジュールといった制約の中でアプリ開発プロジェクトを成功に導き、品質の高いアプリを開発するためには、要件定義からアプリ公開後の運用に至るプロジェクトの各フェーズで起こりうる様々なリスクを適切に管理し、低減していくことが大切です。

コラム アプリ開発プロジェクトを成功に導く「リスク管理」の心得とは イメージ1

プロジェクトで何か大きな問題が発生したとき、そこから対処方法を検討しはじめるのではすでに手遅れです。最悪の場合プロジェクトが炎上してしまうでしょう。一度炎上し始めたプロジェクトでは正常なプロジェクト運営は失われ、無茶なスケジュールやその場しのぎの対応によるチームのモチベーションや業務効率の低下、アプリの品質の低下など、さらなる問題が連鎖的に起こり、悲惨な結果を生んでしまいます。このような問題は、膨れ上がったリスクが現実になった結果として起こります。そして、リスクの多くは、問題が発覚するよりもずっと前、要件定義や設計など序盤の段階からすでにプロジェクトに潜んでいます。これを見逃すことなく適切に対処することが、プロジェクトを成功に導く鍵となります。

例えば、リスクの具体例の一つとして、認識の齟齬が挙げられます。プロジェクトには、クライアント、プロダクトオーナー、リーダー、エンジニア、デザイナ、QA エンジニアなど、多くの関係者が携わるため、関係者間で認識の齟齬が生まれるというリスクがあります。関わる人数が多いほど、要件や仕様が複雑で巨大であるほど、関係者間の距離が離れているほど、このリスクは高まるでしょう。また、別の例として、考慮漏れが挙げられます。スマートフォンの多様化、多機能化が進むにつれ、アプリ開発の複雑さや考慮すべき範囲が広がった結果、様々な考慮漏れが発生するリスクが高まっています。

このようなリスクがプロジェクトの終盤で実現してしまうと大きな問題につながりやすいため、リスクの発生を未然に防ぐこと、生じたリスクを早期に発見すること、 の 2 つの観点で対策を考える必要があります。いくつか、認識の齟齬や考慮漏れの発生に対する具体的な対策を挙げてみます。

ドキュメントの作成

齟齬や考慮漏れを防ぐためには、基本的なことですが、ドキュメントを作成し、それを関係者間で共有することが大切です。会話などリアルタイムなコミュニケーションももちろん大切ですが、そうやって議論した内容をそのままにしておくと、各自の記憶に委ねることになり、時間とともに失われたり、記憶違いが発生します。そのため、最終的にはドキュメントとして起こすことが重要です。Markdown や AsciiDoc などの軽量マークアップ言語をうまく活用しましょう。

また、考慮漏れを防ぐためには、ドキュメントテンプレートやチェックリストを活用するのも有効です。過去のプロジェクトで考慮漏れが発生した箇所をテンプレートやチェックリストの項目として追加しアップデートしていくことで、過去の過ちを繰り返さないようにすることができます。こうやってできたテンプレートやチェックリストは独自の貴重なノウハウとなるでしょう。

漸進的な開発手法の採用

スパイラルモデルやアジャイルといった漸進的、反復的な開発手法を取り入れることで、実際に動くものを早い段階で触ることができるため、早期に齟齬や考慮漏れを検出しやすくなります。文字やワイヤーフレーム、カンプではなく、実際動くものを触れるということは、非常に大きいです。

プロトタイピング

ドキュメントだけでは、内容の解釈に齟齬が発生するというリスクがあります。画面遷移やアニメーションといったドキュメントで表現するのが難しく、解釈の差異が生まれやすい部分に関しては、プロトタイプの作成が有効です。

早期のテスト設計

考慮漏れの発生を防ぐには、早い段階でテスト設計してしまうことも有効です。テスト項目の作成にあたり、期待結果のインプットは仕様であるため、期待結果の不明な項目イコール考慮漏れとなり、考慮漏れを発見することができます。

リスクを管理するということはリスクを避ける、ということではありません。新しいことへの挑戦には常にリスクが伴いますが、挑戦なしに魅力的なプロダクトやサービスを生み出すことはできません。挑戦する過程でリスクとうまく付き合っていくことが大切です。リスクを管理するからこそ、リスクの伴うことにも安心して挑戦することができる、と言えるでしょう。

関連コラム