プロジェクトにはさまざまな理由で問題が発生します。
問題が発生しないプロジェクトというのは存在しないのではないでしょうか。成功するプロジェクトも失敗するプロジェクトも、多かれ少なかれ問題は発生しているものです。では、プロジェクトの成否が分かれるポイントは、何になるのでしょうか。
失敗するプロジェクトとは、一見問題なく進捗しているように見えても、失敗すべく進んでいることが多いと感じています。特に上流工程にて内在した問題が、後々大きな問題として顕在化することが、失敗するプロジェクトの大きな要因になると考えています。
このような事態に陥らないよう、今回はプロジェクトにおける最初のフェーズである「要件定義」に関して、プロジェクトマネージャが取るべき行動プロセスを個人的な見解満載でお伝えしたいと思います。
要件定義とは
要件定義。よく使われる言葉ですが、システム開発における世間一般の定義は「顧客の要望をヒヤリングし、確定すること」といったところでしょうか。言葉の意味としては、どこも似たような定義がなされているかと思いますが、実際の手法に関してはケースバイケースで柔軟に対応することが求められる困難な作業となります。
顧客の意見が二転三転する、決定を下せないなど、さまざまな理由により要件定義が進まないケースが見受けられますが、そういったことを理由に進捗遅れを起こしているようでは、プロジェクトマネージャとして十分な仕事をしたとは言えません。
要件の洗い出し
まずは、要件の洗い出しが必要です。基本中の基本として、顧客要望をしっかりヒヤリングしましょう。この際、顧客が持っている意見をできる限り聞き出せるようにしましょう。すぐに「それはできません」などと回答していては、聞けるものも聞かせてもらえませんし、心象的にも良くありませんね。
顧客要望をヒヤリングした後に、これを明文化して先方の目に見える形で提示しましょう。全体像と個別の要望をリスト化して提示するのが理想でしょう。やってみると大変な作業となりますが、これが後々重要な意味を持ってきます。
目的と理由の明確化
要件の洗い出しが完了したら、それらを元に、目的と理由を明確にしましょう。最優先事項は何なのか、その理由はなんなのか。このプロセスをおろそかにすると、顧客の要望が二転三転したり、決断を下せなくなる大きな原因となり、よく耳にする「決まらない、決めてくれない」といったことになってしまいます。目的やその理由が明確だからこそ、進むべき方向が定まり、判断軸が決まるものです。
また、プロジェクトマネージャもこれを強く意識しておく必要があります。プロジェクトマネージャは、顧客への適切な助言も大切な役割ですが、当然、助言する側の考えがぶれてしまうと、顧客側の考えにもぶれが生じてしまいます。
要件整理
要件の洗い出しが完了し、目的とその理由が明確になったのであれば、ここからは現実的な議論の段階となります。顧客の思いから出た要件は、よく見ると矛盾していたり、重複していたり、目的に合わないものなども存在します。
また、スケジュールや予算、技術的障壁により実現不可能であったり、優先度を下げるべきものも存在します。それらを加味して、取捨選択と優先順位付けを実施し、要件を整理しましょう。要件洗い出しの際に大変な思いをして明文化した成果がここで生きてくるわけです。
明文化を怠っていると、矛盾や検討すべき課題を見落としてしまう危険性が高まります。見落してしまった時から、プロジェクト失敗へのカウントダウンが始まっているかもしれません。
要件定義
要件整理が終われば、後はこれらを正式な要件とするため、顧客の承認を得ましょう。ここまでのプロセスを無駄にしないためにも、必ず承認を得ることを忘れてはいけません。顧客承認までが遠足です。
終わりに
今回ご紹介した内容は、見習い時代に先輩が実践していた方法を自分なりにアレンジして、要件定義の基本的な考えとして取り入れたものです。さまざまな要因をふまえて、やり方を変える必要もあるでしょう。
また、人によって合う/合わないはあるかと思いますが、いろいろな方法論を吸収したうえで、自分の中で
基本的な考えを確立することはとても重要です。基本的な考えが確立し、検証していれば、自分なりにアレンジする必要が生じた際にもその結果をより正確に予測できるので、リスクも低下します。
冒頭でも述べたとおり、プロジェクトの問題の多くは上流工程で潜在的に発生し、下流工程で顕在化するものです。また、どのような問題も、上流工程で対処するほうが確実にリスクが少なく、容易に解決するものです。
プロジェクトの最初の工程にあたる要件定義をしっかりと執り行い、心安らかにプロジェクトを進められるよう、自分自身が「最初で最後の砦」になる意識を持ってください。そして、プロジェクトを成功に導きましょう。